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東京地方裁判所 平成3年(ワ)15886号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、金二一七六万円及びこれに対する平成三年一二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

理由

第一  請求

被告は、原告に対し、金二億五一二七万一四九七円及び内金二億〇一二七万一四九七円に対する平成三年三月一五日から支払済みまで年八・三七パーセントの割合による金員を、内金五〇〇〇万円に対する平成三年三月一五日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を各支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が被告との間で、原告所有の別紙物件目録記載一ないし九の土地(以下「本件土地」という。)について売買の予約としての性質を有する協定を締結したにもかかわらず、被告が右協定に違反し、売買契約の締結を拒絶したことにより損害を被つたとして損害賠償(一部請求)を求めた事案である。

一  争いのない事実

1  原告と被告は、いずれも不動産の売買等を業とする株式会社である。

2  原告と被告は、平成二年三月二九日、大要次のとおりの内容により土地付区分建物売買協定(以下「本件協定」という。)を締結した。

(一) 原告は、本件土地上に鉄骨鉄筋コンクリート造九階建(延面積二五六六・一三平方メートル)の建物(以下「本件建物」という。)を建設したうえで、右土地建物を被告に売り渡し、被告は土地付区分建物として第三者に分譲することを目的として買い受ける。

(二) 原告と被告は、本件建物の建築確認通知書が下付され、原告が工事着工後二週間以内に本件協定に基づき売買契約を締結する。但し、売買契約締結について国土利用計画法二三条の届け出をし、同法二四条による不勧告通知を受けた後とする。

(三) 建築確認申請は、原告の責任と負担において行うこととし、その取得は平成二年八月一五日までとする。

(四) 本件土地建物の売買代金は、金一五億三八四六万円とし、消費税相当額は別途金二七四五万九〇〇〇円とする。

(五) 被告は、前項の売買代金を以下のとおり原告に支払う。

(1) 売買契約締結時に手付金三億円及び第一回中間金三億二三一六万三〇〇〇円の合計金六億二三一六万三〇〇〇円を現金で支払う。

(2) 売買契約締結後、本件建物の着工が被告により確認された日より一四日以内に第二回中間金一億三七二九万五〇〇〇円を手形により支払う。

(3) 本件建物の上棟が被告により確認された日より一四日以内に第三回中間金一億三七二九万五〇〇〇円を手形により支払う。

(4) 本件建物完成引渡時に残金六億四〇七一万円及び消費税相当額金二七四五万九〇〇〇円を手形により支払う。

(六) 原告は、前項(1)の売買代金受領と同時に被告に本件土地の所有権を移転し、かつ、引渡すとともに、所有権移転登記手続に必要な一切の書類を被告に交付する。

(七) 原告は、(五)(4)の残金を受領すると同時に被告に本件建物の所有権を移転し、かつ、引き渡すとともに、被告名義で本件建物の表示登記をすること及び原告又は被告の指定する第三者の名義で保存登記をすることを承諾し、右手続に必要な一切の書類を被告に交付する。

(八) 原告又は被告が商法に基づく整理、和議、自己破産、会社更生の各申立、税滞納処分を受けたときは、その相手方は催告を要しないで本件協定を解除できる。

(九) 本件協定に関し、原被告間に紛争が生じたときは、東京地方裁判所を第一審裁判所とする。

3  建築確認は、当初の予定より遅れて平成三年一月になされた。

4  原告は、同年三月二〇日ころ、被告に売買契約の締結を要求したが、これを拒否された。

5  原告は、同年七月三一日にも、被告に売買契約の締結を要求したが、被告は、マンション市況の悪化により第三者に分譲する目的が達成できないこと及び原告の建築確認の取得が遅延したことの二点を理由に売買契約の締結を拒否した。

二  主たる争点

1  原告の主張

(一) 責任原因

(1) 本件協定は、売買の予約としての性質を有するものであり、当事者に当然に売買契約の締結を義務付ける契約である。

(2) 被告が売買契約の締結を拒否した最大の理由は、マンション市況の悪化であり、被告の主張する他の理由は口実に過ぎない。なお、建築確認の取得が遅れたことについては被告の了解済みである。

(3) したがつて、被告が本件協定に違反して売買契約の締結を拒否したのは被告の債務不履行であり、原告の被つた損害を賠償する責任がある。

(二) 損害(原告の本訴請求は、以下の(1)ないし(4)の損害金合計金二億五三六七万八九九六円のうち金二億五一二七万一四九七円及びうち金二億〇一二七万一四九七円に対する(5)の年八・三七パーセントの割合による利息の支払を、うち金五〇〇〇万円に対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めるものである。)

(1) 設計計画費 金二七二〇万円

原告は、本件建物を建築するために、その設計を金五四五九万円(消費税込み)でオルトに依頼し、平成二年三月二九日及び同年一二月二八日に設計費として各金一三六〇万円を支払つた。

(2) 松下せんに対する特別対策費

金七七〇二万八九九六円

原告は、被告の要求により松下所有の別紙物件目録記載八、九の各土地を建設予定地に組み入れることになつたものであり、右土地は、被告のための事業化でなければ購入することのなかつた土地である。したがつて、原告が右土地を取得するために出捐した松下との合意金二〇〇〇万円、家賃補償金一四五万円(平成三年四月分から平成五年八月分まで)、家賃金三二二万五〇〇〇円(平成二年一〇月分から平成五年八月分まで)、仲介手数料金一二万円、礼金二一万円、引越し代金六二万三九九六円、世話料金四〇万円、土地代金四五〇〇万円(三〇坪)、建物の建築費金三六〇〇万円、合計金一億〇七〇二万八九九六円と前記松下所有の土地の価格金三〇〇〇万円(坪当たり金一五〇万円で二〇坪)との差額が損害となる。

(3) 土地売却損 金九九四五万円

本件土地(約二八六・三坪)の価格は、坪当たり金一五〇万円として、合計金四億二九四五万円である。

ところで、原告は、平成四年夏ころ、株式会社ユニヴァーサルコンサルタント(以下「ユニヴァーサルコンサルタント」という。)と共同事業の形でマンション建設をすることになつたが、ユニヴァーサルコンサルタントは、原告が被告に売買契約の締結を拒否されたことにより、早急に事業化しなければならないということを知り、原告の足下をみて、前記土地を合計金三億三〇〇〇万円と評価してきた。原告は、やむなくこれを受け入れたが、その結果、前記金四億二九四五万円と金三億三〇〇〇万円との差額が原告の損害となつた。

(4) 名誉侵害による損害

金五〇〇〇万円

原告は、被告が売買契約の締結を拒否したことにより、取引先の金融機関及び本件建物の近隣住民等に対して信用を失い、その結果、原告の名誉が著しく侵害され、経営上重大な危機に陥つた。これによる損害は金五〇〇〇万円が相当である。

(5) 利息支払

原告は、本件建物の建築に必要な諸経費を株式会社三和銀行から年利八・三パーセントの約定で借り入れて支払つたが、原告のような資本金五〇〇万円程度の中小企業が、金一五億円以上もするマンションの建築を手持資金のみでは調達できず、金融機関からの融資に頼らざるを得ないのは周知の事実であり、被告もこれを知つていた。したがつて、前記(1)ないし(3)の損害金のうち金二億〇一二七万一四九七円に対する平成三年三月一五日から支払済みまで年八・三七パーセントの割合による利息が損害となる。

2  被告の主張

(一) 責任原因

(1) 本件協定は、売買契約締結に至るまでの交渉段階ないし準備段階における合意であつて、原告と被告の交渉過程でまとまつた取引条件を双方が確認する趣旨で書面化したものに過ぎず、後日において正式契約の締結を予定していることが明らかである。したがつて、本件協定は、原告が主張するように、当事者に当然に売買契約の締結を義務付ける売買の予約としての性質を有するものではなく、何ら法的拘束力を持つものではない。

(2) 仮に本件協定の締結により、当事者間に何らかの法的義務が生ずるとしても、被告が売買契約の締結に至らなかつたのは、原告の方で取得すべき建築確認が約束の時期より約五か月も遅延したのが最大の理由であり、しかもその間にリゾートマンションの市況が悪化したうえ、原告から売買価格の坪当たり単価の増額要求もなされたこと等が重なつたものであり、これらはいずれも被告の責めに帰すべからざる事由によるものである。

(二) 損害

原告の主張する損害は、ユニヴァーサルコンサルタントとの共同事業により損害が填補されたかあるいは相当因果関係の認められないものである。

第三  争点に対する判断

一  本件協定に基づき、被告に売買契約締結義務が生ずるか否かについて判断する。

前記争いのない事実に、《証拠略》を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告は、平成元年五月二六日、静岡県熱海市にリゾートマンションを建設し、土地付建物として第三者に販売することを目的として設立された。

2  そこで、原告はまず建設予定地の買収を開始し、熱海市下多賀字砂田四三二番一九宅地一二〇・四六平方メートルの土地(同土地は平成三年一月二九日に別紙物件目録記載一、二の各土地に分筆された。)につき平成元年六月一日受付の所有権移転登記を、同所四三一番三宅地七一六・四九平方メートルの土地(同土地は平成三年三月一二日に別紙物件目録記載三、七の各土地に分筆された。)、別紙物件目録記載四の土地及び同所四三一番一〇宅地三五・六〇平方メートルの土地(同土地は平成三年一月二九日に別紙物件目録記載五、六の各土地に分筆された。)につき平成元年五月三〇日受付の所有権移転登記を、それぞれ経由した。

原告は、建設予定地として以上の土地の他に、別紙物件目録記載八、九の各土地を買収すべく所有者である松下せんと買収交渉を行つたが、同人が出した条件が受け入れられるような条件ではなかつたため、平成元年末ころ、右土地を買収することを断念し、右土地を除外して計画を進めることにした。

3  平成二年一月ころ、本件土地建物の売却の話が被告に持ち込まれたので、被告において検討したが、前記松下所有の土地を除外した建設予定地の地形がマンション建設予定地としては良くなかつたことから、右売買の話を断つた。

4  その後、原告は、被告との売買契約を成立させるため前記松下所有の土地を買収することにし、再度同人と交渉した結果、平成二年二月一三日、売買契約を締結した。但し、所有権移転登記は、平成三年四月一二日になされた。

5  以上により、松下所有の土地を含めた形で建設予定地が買収できたことにより、原告と被告は、平成三年三月二九日、前記のとおり本件協定を締結し、さらに、右同日、原告は、株式会社企画設計事務所オルト(以下「オルト」という。)と本件建物建設についての設計監理委託契約を締結した。

以上によれば、本件協定は、建築確認の取得や国土利用計画法の不勧告通知を受けた後に、売買契約を締結することを目的として、売買契約締結の準備段階においてなされた合意であつて、これにより、当事者としては、売買契約の成立に向けて誠実に努力、交渉すべき信義則上の義務を負うに至つたというべきである。したがつて、一方の当事者が、正当な事由もないのに売買契約の締結を拒否した場合には、右信義則上の義務違反を理由として相手方の被つた損害につき賠償すべき責任を負うものと解するのが相当である。

なお、原告は、本件協定は、売買の予約である旨主張するが、本件取引は土付建物の売買であるから建物の建築確認をとる必要があり、さらに、国土利用計画法の届け出をしなければならないところ、同法二四条の勧告がなされた場合には予定した売買代金の見直しが必要となる等不確定な要素もあることや本件協定の文言からしても、本件協定は売買契約締結のための交渉を予定しているというべきであるから、本件協定が原告の主張するような売買の予約であると認めることはできない。

また、被告は、本件協定は、売買契約締結に至るまでの交渉段階ないし準備段階における合意であつて、原告と被告の交渉過程でまとまつた取引条件を双方が確認する趣旨で書面化したものに過ぎず、何ら法的拘束力を持つものではない旨主張するが、前記の事実に照らし、被告の右主張は採用できない。

二  そこで次に、被告が売買契約の締結を拒否した事情について検討する。

前記争いのない事実に、《証拠略》を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告は、本件協定を締結した後、建築確認を得るため近隣の同意を得ようとしたが難航し、本件協定で建築確認取得日とされていた平成二年八月一五日を経過した。その後、被告から建築確認についての催促があつたが、ようやく同年一二月一日に近隣全員の同意を取りつけたので、原告は、建築確認の申請をしたところ、平成三年一月、建築確認を受けた。

2  そこで、原告は、被告にその旨連絡するとともに、被告に対し、近隣補償と工事費の増額を理由に、売買価格坪当たり金二四〇万円を金二六〇万円位まで増額して欲しいと要求し、さらに、原告は、前記のとおり建築確認を受けたので、平成三年三月二〇日ころ、被告に売買契約の締結を要求した。

これに対し、被告は、いわゆるバブル景気が崩壊してマンション市況が悪化していたことから、右売買価格の増額要求の点を含めて、改めて売買契約の締結について検討したところ、採算が合わないという結論に達したので、本件取引を見直すことにし、その旨原告に伝えた。

3  原告は、同年七月三一日にも、被告に売買契約を要求したが、被告の西川第二住宅事業部長は、マンション市況の悪化により本物件を第三者に分譲する目的が達成できないこと及び原告の建築確認の取得が遅延したことの二点を理由に売買契約の締結を拒否した。

これに対し、原告は被告に再考を促したが、その後結局被告との取引を断念した。

以上によれば、被告が売買契約の締結を拒否したのは、主としていわゆるバブル景気が崩壊したことによるマンション市況の悪化が理由であると認められる。そして、被告は大手のマンション販売業者であるから、本件協定を締結するに当たつては当然景気の動向等諸般の事情を総合的に検討したはずであり、それにもかかわらず本件協定締結後わずか一年で市況の悪化を理由に売買契約の締結を拒否するのは、正当な理由であるとは認め難いというべきである。

なお、被告は、原告が売買価格の増額を要求したことも理由の一つに挙げているが、その点を問題にしたのであれば原告と交渉してしかるべきところ、そのような形跡はないし、被告が売買契約の締結を拒否した際もその点を理由には挙げていなかつたことからすると、このことは売買契約の締結を拒否する程の理由であるとは認められない。

以上によれば、被告には契約準備段階における信義則上の義務に違反し売買契約の締結を拒否したというべきであるから、これにより原告が被つた損害を賠償すべき責任がある。

もつとも、前記の事実によれば、被告が主張するように、原告の建築確認の取得が遅れた過失があつたことは否定できないので(原告は、建築確認の取得が遅れたことについて被告が了解した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)、後記損害賠償額の算定に当たつて考慮することとし、二割を減額することとする。

三  そこで、損害について判断する。

1  原告主張の損害(1)について

前記認定の事実及び《証拠略》によれば、原告は、平成二年三月二九日、オルトとの間で、金五四五九万円(消費税込み)で設計監理委託契約を締結し、同社は設計図を作成したこと、原告は、右約定に従い、同月二九日及び同年一二月二八日に、各一三六〇万円を支払つたことが認められる。

ところで、《証拠略》によれば、原告は、被告が売買契約の締結を拒否したことにより、被告との契約を断念したが、平成四年三月一六日、ユニヴァーサルコンサルタントと共同事業協定を締結し、その後平成五年五月六日、共同事業契約を締結したこと、そして、原告は、前記オルトに設計監理を委託し、原告は、設計変更費用としてオルトに金二〇〇〇万円を支払つたことが認められる。そして、右認定の事実に、《証拠略》を総合すると、前記オルトの作成した本件建物の設計は、ダイアパレス標準仕様といわれる被告独自の仕様によるものであるから、ユニヴァーサルコンサルタントとの共同事業によるマンション設計には流用できなかつたものと認められる。

したがつて、原告が設計費用としてオルトに支払つた前記金二七二〇万円は、被告の前記義務違反と相当因果関係のある損害と認められる。

2  原告主張の損害(2)について

原告は、被告の強い要求により松下所有の土地を建設予定地に含めることになつたと主張し、それに沿う証拠として甲五九及び証人鈴木康弘(第一回)があるが、《証拠略》に照らすと、被告が本件取引に強い関心を示していたとは必ずしも認められず、原告の主張に沿う前記各証拠はたやすく措信できない。

のみならず、仮に原告主張のとおりであつたとしても、被告の要求は、本件協定を締結する以前の時期のものであり、協定締結後であればともかく、その前の段階においてより商品価値の高いものであれば商談に応じるというのは経済活動としてむしろ当然の行動というべきである。

一方、被告の要求に応じても採算がとれるかどうかは、原告の経営判断に任されているというべきであつて、原告としては被告の要求を断ることも可能であつたのである。そして、本件において原告は、松下からの買収の条件が原告にとつて厳しいものであつても、それにより商品価値が高まり、被告が売買に応じてくれることによつて、採算がとれると判断したからこそ、買収に踏み切つたというべきであるから、被告の前記義務違反とは相当因果関係のある損害とは認められないというべきである。

3  原告主張の損害(3)について

原告は、被告に売買契約の締結を拒否されたことを知つたユニヴァーサルコンサルタントに足下をみられたことにより、本来の価格である坪当たり金一五〇万円より低い価格で同社に売却せざるを得なくなつたと主張し、これに沿う証拠として甲七八があるが、甲七八には算定の根拠が示されていないのみならず、正確な価格評価はできないと記載されており、原告がユニヴァーサルコンサルタントと共同事業協定を締結した平成四年三月ころは、いわゆるバブル景気が崩壊して土地の価格が下落傾向にあつたことは公知の事実であることにも照らすと、にわかに措信できないというべきであり、他に原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はないというべきである。

したがつて、原告の主張は認められない。

4  原告主張の損害(4)について

原告主張の損害の発生を認めるに足りる的確な証拠はないし、仮に原告主張のような損害が生じたとしても、本件のような契約の準備段階における被告の前記義務違反と相当因果関係のある損害とは認め難いというべきである。

5  原告主張の損害(5)について

《証拠略》によれば、原告は、平成三年二月二八日以降株式会社三和銀行から借り入れたことが認められる。

ところで、前述したとおり原告の損害として認められるのは、前記設計計画費であるところ、原告がオルトに設計費として支払つたのは、平成二年三月と同年一二月であり、右借入金による支払いではないと認められるから(なお、証人鈴木康弘は、原告は、土地を取得して建築確認をとる資金はあるが、その後の建築資金まではないと証言(第一回)している。)、結局、右借入金による利息支払いは、被告の前記義務違反と相当因果関係のある損害とは認め難いというべきである。

6  以上によれば、原告の損害として認められるのは設計計画費の金二七二〇万円であるが、前述したとおり原告の過失を斟酌すると、賠償額は金二一七六万円が相当である。

四  以上の次第で、原告の請求は、金二一七六万円及びこれに対する本件記録上明らかな本件訴状送達の日の翌日である平成三年一二月三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(なお、原告は、その請求の一部の金五〇〇〇万円については遅延損害金の支払を求めているものと解されるが、原告の請求する各損害金は同一の訴訟物であるから、右一部の損害金五〇〇〇万円の金額の範囲内で右附帯請求を認めることができるものというべきである。)。

(裁判官 角 隆博)

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